かなり前に、好きな東方ボーカル・インディーズバンドの「TaNaBaTa」を紹介した。
当時はハンドルネームが違ったり、書き方も丁寧語で結構記事の感じが異なる。が、それはともかく、TaNaBaTaは今もたまに聴くし、東方ボーカルとして自信を持ってオススメできるアーティストの一つだ。
今回は、そんなTaNaBaTaと並んで、僕がおそらく高校生の時から聴き続けている東方ボーカルを、もう一つ紹介しよう。
Girl’s short hairとは
「Girl’s short hair」(通称?ガルショ)は、2009年から2012年くらいまで活動していた同人音楽サークルだ。
当時人気だった歌い手の「yonji」を中心に、クオリティの高い演奏してみた動画に定評のあった「やよいちゃん」、ベースの「-nim-(地味侍)」で構成される。
TaNaBaTaの、どちらかと言うと中性的な声や歌詞・アレンジの雰囲気とは異なり、けっこう強めのロックで、声も男性的なエッジがかかっている。
楽曲の数は多くはないものの、良いものの良さがずば抜けているのが、ガルショのすごいところだ。
この記事では、そんなガルショの楽曲リストの中でも、特にオススメできるものを、僕の趣味全開で紹介していこうと思う。
Girl’s short hair・超オススメ曲
シンデレラ・エイジア
原曲:東方永夜抄「プレインエイジア」(キャラクター:上白沢慧音)
僕は音楽系の記事では、初めからブルーアイズ・ホワイトドラゴンを速攻召喚すると決めている。
1つ目に紹介する曲によって、続きを読んでもらえるかが、かなり左右されるからだ。なので、それが紹介するアーティストへの礼儀でもある。
僕は歌うのが好きで、以前にも少し書いたが、時代的に歌ってみたが全盛期の時に10代後半~20代前半を過ごした。それもあり、どうすればかっこいい声で歌えるか?を半ば人生の命題として10年以上取り組んだ過去を持つ。
そんな僕が歌った回数がトップクラスに多い東方ボーカル曲、それが「シンデレラ・エイジア」。
久々に聴いてみて思うが、やはりyonjiの声はめちゃくちゃ良い。
タイプとしては、当時売れ線だった「そらる」少し後になって「まふまふ」や「りぶ」のようなクリア系のボイスではなく、しっかりとエッジがかかっており、いわゆる「イケボ」からは少しズレた声。
僕自身の声も、クリアな感じからはかなり離れており、人気歌い手と比べて、「なんでこんなに濁った音なんだろう」とコンプレックスを抱いていた。だが、yonjiを聴くと、「ハスキーの方がかっこよくね?」と思わされる。
(「ハスキー」という言葉のイメージと実際の歌声は少し異なるが、声質の区分としては正しい表現だと思う。声の粒が一様ではないイメージ。)
曲の構成は、かなり短めで最初から最後までずっとクライマックス、みたいな感じ。このタイプの曲は、メロディさえ良ければ何度も聴けるので、切り札にふさわしい。
原曲「プレインエイジア」は、東方永夜抄・永夜事変の最中、主人公一行が人間の里を襲いに来たと勘違いした上白沢慧音のテーマBGM。「歴史を食べる(隠す)程度の能力」で人間の存在をなかったことにし、主人公に勝負を挑む。
この曲は、夜の暗さや慧音の「人間を守る!」というシリアスさを連想させる。アレンジ先の歌詞である、「夜」「月」そして、12時にシンデレラが去ってしまうというお決まりのシチュエーションにもマッチしており、楽曲のクオリティを高めている。
悪くないね。
原曲:東方永夜抄「月まで届け、不死の煙」(キャラクター:藤原妹紅)
2曲目も、奇しくも東方永夜抄からのアレンジである。
「悪くないね。」は、あまり東方に詳しくなかった頃(今も詳しくはないので勉強中だが)、「不良少年の曲なのかな?」と思って聴いていた。だが、おそらく原曲が使用されるボスキャラ、藤原妹紅の設定に忠実に書かれた曲である可能性が高い。
歌詞から、ケンカを終えた主人公がタバコをくゆらせながら帰路につく1番、月を見上げながら一人酒を楽しむ夜を回想する2番。そして、変わり映えのない毎日も「悪くないね。」と再びタバコをくゆらせながら帰るラスト、という構成になっている。
これは、1000年以上生きてきた妹紅が(妹紅は藤原不比等の娘だと言われている)、今もなお、蓬莱山輝夜と毎日”殺し合い”をしている状況が背景になっている。少し退屈に思える時もあるかもしれないが、なんだかんだ妹紅は毎日楽しく生きてる、という描写を曲にしているのだろう。
(公式で、タバコを吸うような発言もあった。詳しくは、ニコニコ大百科を参照。)
Girl’s short hairの中では比較的スローテンポの曲ではあるが、やよいちゃんのギターの歪みが心地よく、しっかりロックが感じられる作品。サビの切ない感じも気に入っていて、音程が上がる所が歌っていて気持ち良い。
原曲「月まで届け、不死の煙」がタイトル通り、「どこまでも登っていく煙」を連想させ、メロディから空間的距離を体感できる、名曲だという事を再認識させられる。やはりZUNは天才。
昔からネットの住民には、細かいことで目くじらを立て、互いに悪口を言い合う人も多い中、コメント文化全盛期のニコニコで活躍していたyonjiが「肩の力、抜いていこうよ」と歌った。
これは、現在のYouTubeにも全く同じことが言えるのが面白い。(特にApex系動画のコメント欄はキツイやつも多い。)
一日の終わり、「悪くないね。」と言えるなら、人生そう捨てたもんじゃないのかもしれない。
迷い家へようこそ
原曲:東方妖々夢・2面道中曲「遠野幻想物語」(キャラクター:橙)
「迷い家(マヨヒガ)へようこそ」は、若干暗めの雰囲気とギターのディストーションがかっこいい、ロックナンバーだ。
歌詞は、東方妖々夢の2面に非常に忠実。春度を求めて山をさまよう内に「マヨヒガ」にたどり着き、化け猫(式神の橙)に化かされてしまうといった内容だ。
どちらかと言うと、先述の「シンデレラ・エイジア」に近い構成で、短いながらも秀逸なメロディラインと勢いのあるアレンジが特徴的。何回も聴いてしまうような曲だ。
橙と言えば、ボス曲の「ティアオイエツォン(withered leaf)」もめちゃくちゃ良くて、以下のインストアレンジもよく聴いていた。
流星スピード
原曲:東方文花帖「レトロスペクティブ京都」(キャラクター:射命丸文)
この曲は、東方文花帖の主人公・射命丸文の、「幻想郷最速」と言われるそのスピードに着目して書かれた歌である。
東方文花帖は、他シリーズのように敵を倒すのではなく、新聞記者の文が敵の弾幕を写真に収めることによってクリアできる、異色のゲームだ。
原曲である「レトロスペクティブ京都」は、撮影対象がレベル8~10と非常に強敵の時にかかるBGMである。
東方妖々夢・永夜抄・花映塚の、超重要キャラばかりが登場する面なので、文もそれだけ弾幕を避けるのに本気の速さで挑んでいると考えられる。「流星スピード」は、そのスピード感が歌詞に表れている良曲だ。
ガルショの曲はエコーの具合やギターの歪みで、こってりとした印象のものも、特に初期には多い。
しかし、この曲は演奏も爽やかで、かつこれまで紹介してきたものと比べれば比較的しっかりとした長さがあり、聴きごたえがある。
裸足のヒロイン
原曲:東方地霊殿「少女さとり~3rd eye」(キャラクター:古明地さとり)
この曲は、まず原曲が神。だからアレンジも当然良いものが多く、以前紹介したTaNaBaTaの「さとりさとりさとり」も同じ曲からのアレンジだ。
TaNaBaTaのページでは紹介しなかったので、ここに貼っておこう。ガルショと聴き比べると、東方アレンジの良さもかなり分かってくると思う。
「裸足のヒロイン」に話を戻そう。
この曲は、特に前奏とサビが良い。前奏は、原曲だとピアノが艶っぽい印象があるのに対し、あえてメロディを単調にしギターでフレーズを繰り返すことにより、初めからノリノリになれるアレンジにしている。
歌詞は、やはり心が読めるというさとりの能力を由来にしている。「相手の内側の心を解放する」ような表現をしており、それを裸足と書くセンスが面白い。
また、血液という単語が複数登場しているが、おどろおどろしいメロディにマッチしていて素晴らしい。
雨傘天気予報
原曲:東方星蓮船「万年置き傘にご注意を」(キャラクター:多々良小傘)
この曲は、僕も好きだが、弟がすごく好きな曲である。
東方星蓮船のアレンジと言えば、「春の湊に」や「幽霊客船の時空を越えた旅」が多いイメージだが、「万年置き傘にご注意を」も秀逸な曲がいくつかある。
原曲は、キャラクターが唐笠お化けと女の子なこともあり、可愛さと、所々に差し込んだ不気味さが同居した曲となっている。
一方、アレンジ後のこの曲は、とてつもなく爽やかな青春チューン。雨が好きという変わった女の子にドキドキする主人公という構図で、「明日また雨になあれ」というサビの歌詞が、空とリンクしてなんとも爽快だ。
Aメロから順番に少しずつ盛り上がっていく、王道な展開も聴きやすい。ラスサビの前に少し違ったメロディが入っても良かったかもしれない。(原曲にないから無理か)
ノンストップレールウェイ
原曲:卯酉東海道(ZUN’s_Music_Collection)「ヒロシゲ36号 ~ Neo Super-Express」(キャラクター:宇佐見蓮子、マエリベリー・ハーン)
この曲は「もっと前に掲載してもいいだろう!」と思う人も多いだろう。それほどのクオリティ。
原曲は、東方シリーズではなく、上海アリス幻樂団による音楽CD作品である「ZUN’s_Music_Collection」の第四弾「卯酉東海道」のトラック1。
このCDは、”宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーン(メリー)の二人が、京都から東京へ行くまでの「卯酉新幹線『ヒロシゲ』」内部での53分間の一幕を切り取ったストーリー”となっている。
なので、アレンジした「ノンストップレールウェイ」も、列車に乗って遥か遠くまで行く旅の途中、過去を振り返りつつも、未来へ思いをはせるという、物理的にも時間軸で考えても壮大な内容だ。
やはりサビが特に良くて、思わず口ずさんでしまう中毒性がある。ぜひ聴いてもらいたい一曲だ。
ちなみに、蓮子とメリーの二人は、幻想郷の外の世界、つまり人間界(しかも近未来)に住むキャラクターで、二次創作では第二の霊夢&魔理沙のような主人公ぺアとして、よく見ることができる。
以下のアニメシリーズはめちゃハイクオリティなので、オススメ。
ホワイト・チョコレート
原曲:東方妖々夢・一面道中曲「無何有の郷 ~ Deep Mountain」
詳しく解説する曲目は、これで最後になる。冬が終わらず、春度を探しに出発する東方妖々夢の始まりで聴ける原曲らしい、冬のバラード曲だ。
「無何有の郷 ~ Deep Mountain」はめちゃくちゃ名曲で、僕は大好きなインストアレンジが一つある。
「ホワイトチョコレート」は、Girl’s short hairには珍しい、ストレートなラブソングだ。
アコースティックギターとyonjiの声が非常にマッチしており、エレキギターのリバーブが多めでロマンチックな雰囲気を出している。
歌詞が少し甘すぎるきらいはあるが、バレンタインの曲なので、それもまた良し。
原曲でテンポが遅いものが少ないこともあり、東方アレンジでバラードは多くないが、もっと増えてほしいと思わせてくれる一曲。
まだまだある、ロックが好きな人へオススメの曲
ここからは、比較的何も考えずガーっと聴ける、オススメのロック曲を紹介しよう。
僕は特に好きな曲(よく歌う曲)を前章に集めたつもりだが、客観的なクオリティを考えれば、この章の曲たちも、全く引けを取らない。
奇跡の先へ
原曲:東方星蓮船・一面道中曲「春の湊に」
軽快でポップな前奏から一気に駆け抜ける一曲。とりあえずパっと再生して絶対良い保証ができる。
とある少女の幻想魔法
原曲:東方紅魔郷「ラクトガール ~少女密室」(キャラクター:パチュリー・ノーレッジ)
これと「奇跡の先へ」は上で紹介したものに勝ってるまである。ガルショの底力が感じられる。
境界線
原曲:東方妖々夢「ネクロファンタジア」(キャラクター:八雲紫)
この曲の前奏を聴いてガルショのファンになった。あのサウンドはこのサークルにしか出せない。
to be continued…
原曲:東方紅魔郷「U.N.オーエンは彼女なのか?」(キャラクター:フランドール・スカーレット)
「東方と言えばコレ!!」という原曲。
「to be continued…」は、ボーカルよりギターを聴く曲と言っていい。めっちゃワウってる速弾きの所がめちゃカッコいい。
歌う場合は盛り上がるまでが遅いのがたまにキズ。
氷の果実
原曲:東方紅魔郷「おてんば恋娘」(キャラクター:チルノ)
あの「チルノのパーフェクトさんすう教室」で有名な原曲を、ガルショお得意のギターロックに昇華。この曲のyonjiは「なんで?ww」ってくらいビブラートがすごい。
TaNaBaTaのアレンジも昔から人気なので、比べてみると面白いかも。
千秋の滝
原曲:東方風神録「フォールオブフォール ~秋めく滝」(キャラクター:犬走椛)
この曲も爽やか路線。秋に山道を散歩して、その鮮やかな景色に心を打たれるシーンが目に浮かぶ。
シャッターチャンス
原曲:東方文花帖・Level6,7,Extra「東の国の眠らない夜」(キャラクター:チルノ)
珍しくサビから始まる曲。とても耳に残るフレーズ。
おわりに
今回の記事で、Girl’s short hairの魅力が少しでも伝われば幸いだ。
他にも曲を漁りたいと言う人は、ニコニコの「Girl’s_short_hair」タグで聴くことができる。
今後も、良い音楽が見つかったら、たまに記事を書くかもしれない。今回は以上だ。