Artisanのマウスパッド「ハヤテ乙(XSOFT)」を買ってみた。
以前、感度設定の記事で説明したが、僕の感度はOblyに近いこともあり、彼の(購入当時)使用していたマウスパッドが気になったからだ。
また、ハヤテ乙は僕と振り向き感度が同じであるDizzyMizLizy(彼は800DPI)、そして同じく国内プロのRaygh選手も使っており、性能に期待が持てるとも思った。
今回のレビューで、僕と同じくハヤテ乙を買ってみようか迷っている人の参考になると嬉しい。さっそく始めよう。
結論
Artisan「ハヤテ乙(XSOFT)」は、G640のような中間的な性能のマウスパッドに比べると、かなり滑りやすい。
よって、万人向けではなく、以前紹介した「零(MID)」の方が、断然オススメである。
Artisanのマウスパッドは硬度よりブランド名の差が大きい
先ほどハヤテ乙(XSOFT)の購入理由として、プロ選手の名前を挙げたが、選定理由はそれだけではない。
僕にとって、以前レビューした「零(MID)」は相変わらずベスト・オブ・マウスパッドであり、その零よりずっと滑るマウスパッドが欲しいわけではなかった。
そこで、シデンカイ>ヒエン>ハヤテ乙>零の順に滑るArtisanシリーズの隣であるハヤテ乙、その中でも最も柔らかく滑らないXSOFTを選ぶことで、滑りすぎるリスクを最小限に抑えられると思ったからだ。
しかし、蓋を開けてみると、XSOFTだろうがハヤテ乙は零より断然滑りやすかった。ということは、Artisanのマウスパッドは、硬度の違いによる滑りやすさ・止めやすさの差よりも、ブランド名自体の違いによるスペックの差の方が、圧倒的に大きいと予想される。
今現在、僕のイメージでは、・・・ヒエン(XSOFT)>>>ハヤテ乙(MID)>ハヤテ乙(SOFT)>ハヤテ乙(XSOFT)>>>零(MID)>零(SOFT)>零(XSOFT)くらいの想定だ。(滑りやすい順)
これはつまり、以前零(MID)のレビューで言及した、マウスパッドの硬さによって生じる静止摩擦力の違いより、結局の所、表面の繊維の織り方や素材感の方が、最大静止摩擦力・動摩擦力ともに影響が大きい事を示唆している。
ハヤテ乙の表面レビュー
では、ハヤテ乙の表面は具体的にどうなっているのか。
これは、零(MID)の生地が密度の高い純粋な布製、G640の生地感は、それに対して少し目が粗い合成っぽい質感なのに対し、ハヤテ乙は、合成っぽい質感に、表面がざらざらになる加工を加えたといったカンジだ。
触った感じも、G-SRを含め、これまで買ったどのマウスパッドと比べても、もっともざらざらしており、微小な凸凹がずっと続いているよう、と表現しても良いだろう。
また、実際にマウスを滑らせてみると、他のマウスパッドと違い、マウスとマウスパッドとの密着具合がかなり少なく、空気を含みながらサラサラと進んでいく感触がある。
初動は相当よく滑り(というか滑りすぎ)、つまり最大静止摩擦力は極端に小さく、しかし滑らせている時は常に、Artisanマウスパッドのウリであるざらざらした感覚があり、そのざらざら感は零(MID)の3倍はある。
しかし、ここまで滑りやすいとざらざら感はあってもさすがに止めづらく、操作の正確性で零(MID)に大きく後れをとるだろうな、と思わされる。
よって、リサーチをすると零の次に滑りにくいような書き方がされていることの多い「ハヤテ乙」だが、実際は零だけミドルクラス、それ以外は全部「滑りやすいor滑りすぎ」が正確な表現である。
他マウスパッドとの性能比較
ここからは、以前零(MID)の記事で作ってみた、マウスパッドのスペックの比較表に、ハヤテ乙を付け加える形で、使用感をお伝えしていこう。
G640 | 零MID | G-SR | ハヤテ乙 | |
滑りやすさ(初動) | 2 | 3 | 1 | 5 |
止まりやすさ | 1 | 2 | 3 | 1 |
ご覧の通り、メジャーなマウスパッドと比べると、かなりピーキーな性能であることが分かる。
まず、滑りやすさだが、明らかに左の3つと一線を画する程度には滑ってしまう。
さらに、止まりやすさだが、先ほど述べたように、ざらざら感自体はかなりある。しかし、実際に使ってみると結局滑りやすさが勝ってしまうので、「ざらざらしてるのに止まるまではいかない」と感じる。
結果的にG640と同じ止まりやすさの数字にはなったものの、純粋な止めやすさでは0.5かもしれない所をざらざら感で印象として1になった背景すらある。
ちなみに、これらの滑りやすさ・止まりやすさだが、経年劣化すると、相対的に評価がかなり変わることに気づいた。
そちらも相応に長くなるので、追って別記事で説明することにする。
硬度はあまり気にしなくていい
僕がこの「ハヤテ乙(XSOFT)」を買ってからしばらくして、Oblyは同製品のSOFTに鞍替えした。
が、これはあまり気にしなくて良いと考える。
以前零(MID)の記事で、最大静止摩擦力の低さをMIDならではのスポンジの硬度に帰結させたわけだが、つまんでみると零(MID)より明らかに柔らかい(正に指が沈みこむ)ハヤテ乙(XSOFT)の方が、明らかに滑りやすい。
また、硬さに注目してこれまでのマウスパッドもよおく見てみると、実は最も硬度が高いのはG640だが、少なくとも新品の時は零(MID)の方が少し初動が良かった。
(今、新品に近いG840=G640の長い版と、同じく買ったばかりの弟の零MID・XLサイズを比べても、同じ感想である)
よって、マウスパッドの性能は、硬さより表面の織り方や素材感からの影響が大きいという意見に変わった。
なぜ生地自体は変わらないのに滑りやすく止めやすいが成り立つのか?という疑問は残ってしまうものの、零MIDの記事に書いた摩擦力の論理はともかく、スペック自体は変わらないので、やはり零(MID)は傑作だと言う結論になってしまう。
総括
ここまで書いたら、結論は一つだ。
「零(MID)でええわ。」
同じArtisanシリーズで見ても、ハヤテ乙でこれだけ滑るなら、ヒエンやシデンカイは試す気すら起こらない。
ミドルクラスのマウスパッドで普通に満足できている人は、プロが使っているからといって検討する必要はないだろう。
よって、この記事の意義は、マウスパッド選定をシンプル化する事に寄与する点と言っても良い。
滑るマウスパッドの潜在能力
ただ、今考えている仮説が一つある。
それは、「高DPIなら滑るマウスパッドの方が相性が良いのではないか?」という疑問である。
高DPIは低DPIより、エイム時のレティクル操作の最小単位が少ないので、理論上より細かく敵を狙うことができる。
その際に、滑りにくいマウスパッドなら勢い余るような指先での微小な操作も、滑りやすいマウスパッドなら、最大静止摩擦力が小さい分、ほんの少しの力で動かせるので成立しやすい。
さらに、そもそもトラッキングエイムが重視されるApex Legendsでは、マウスパッドを滑るものにする代わりに、適正感度(下記記事を参照)よりも大幅に下げることで、滑らかに敵を追うエイムがしやすいという論理もある。
これら2つに気づいているプロ選手が、理論上安定してエイムできる400DPIをあえて選ばず、800DPIを採用している可能性もある。(e.g. Aimbot, Hardecki, Crylix)
なので、現時点で滑りやすいマウスパッドを完全にシャットアウトしてしまう事もまた、時期尚早である。さらに研究を進めるべきだろう。
今回はそんな感じだ。参考になったら嬉しい。以上!