今日は、前回のビデオ設定の記事で言っていたように、設定全般についての考え方の話をしたい。
結論はタイトルにつきる。しかし、なぜ設定を変えないことが中級者以上に必須になってくるのか、完璧に言語化した記事をいまだ見たことがない。
今回は、そこを丁寧に分析していくことで、Apex民たちの「感度の沼」・「設定の沼」を解消していき、設定関連の記事の現状における”仕上げ”としたい。
よろしく頼む。(構成は、目次の通り。)
中級者以下に必要なのは「操作の自動化」
Apexプレイヤーの強さ・定義づけ
まず、便宜的に、Apexにおける初級者~プロの強さの目安を、ざっくりランク帯で分けよう。
ランクだけがApexではないが、はじめにざっくりとイメージを共有しておかないと、以降の文章で使う〇級者という表現が分かりにくくなる。
ゴールドランク以下=初級者
プラチナ帯=中級者
ダイヤランク以上=上級者
プレデター=超上級者
プレデター上位相当=プロ
コレでいこう。
プロ・上級者と中級者以下の決定的違い
設定固定の重要性を説くにあたって、まず最初に認識しておきたいのは、Apexにおいて(他のFPSでも)試合中にする行動は、大きく2つに分かれるという事だ。
それが、“操作”と“立ち回り”。
詳しく言うと、”エイム・キャラコンという、自分の動きを操作するもの”と”立ち回りという、試合の状況について考えるもの”の2種類だ。
では、これら2つをどのように考えれば上達できるのか。
プロの脳内で起こっていること
Apexにおける、プレイングの理想形は、もちろんプロ選手だ。なので、ここで彼らのプレイを思い返してみよう。
Twitchをメインとしたストリーミングや、YouTubeでの切り抜きが、気軽に観られる時代になったことで、Apexプレイヤーで彼らのプレイを全く観たことがない、という人はおそらく少数派だろう。
そして、彼らが試合中考えていること、特にチームメイトと喋っていること(報告している事含む)は、ほぼ全て“立ち回り”関連の事柄である。
具体的には、ポジショニング・敵の位置把握・フォーカスの対象・バッグの中身のマネジメント・スキルの使いどころ等だ。(ダメージ報告も、もちろんその後どう詰めるかという“立ち回り”のための情報だ。)
また、ランクごとの試合模様をウォッチしていると、ダイヤ帯(正確にはダイヤⅢ)以上はエイムやキャラコンのレベルが高いことは当たり前で、立ち回りの巧拙が試合結果に如実に表れている。
つまり、プロは試合中操作については全く脳のリソースを割かず、立ち回りに全集中しているし、少なくとも上級者以上のプレイヤーは、全くのゼロではないにせよ、ほぼ似たような状態でプレイが出来ていることは想像に難くない。
これが意味することは、操作=エイム・キャラコンは完全に自動化されている(考えずとも体が動く)という事だ。
僕達も、日常的に行うこと、例えばスマホのロックを解除したり、トイレで水を流すレバーを引く時、歯磨きをしている時に、「ああして、こうして…」と考えることは決してない。
上級者(ダイヤランク)以上の人達にとって、ゲームの操作それ自体はその程度のものにすぎない、という事である。
中級者以下の場合
翻って、中級者(プラチナ)以下はどうだろうか。おそらく、エイム・キャラコン共に、完全に無意識でやれているわけではないだろう。
基本的な操作はともかくとして、敵を見つけてから照準を合わせるまでのスピード・リコイル・難しめのキャラコン等、まだまだ課題の残る項目も多い。
それでは、上級者たちのように完全に立ち回りに集中することはできないし、そもそも操作面で劣っているので戦闘で勝つのが難しい。
なので、中級者以下は、まず操作面を上級者たちと同水準に持っていくのが先決だ。ただ、そのためには1つの前提をクリアしておかなければならない。
それが本記事のテーマである、設定の固定である。中級者以下には、まだ設定面が完全に固まっていない人が一定数いる。連日「あれでもない、これでもない」と感度やキーバインド、視野角を設定しなおしてはいないだろうか。
自分にとって、ベストな設定を見つけるのは大事だ。しかし、設定を変え続けている限り、操作を自動化することはできない。自分とキャラを一体化させることはできない。
その理由を、次章で説明する。
何か問題を解決したい時は、まずは要素に分解すると良い。(e.g. FPS=操作×立ち回り)
設定を変えてはいけない理由
自動化のメカニズム
では、なぜ設定を変えてしまうと、操作を自動化し、考えずとも体が動く状態になれないのか。ここで、Apexの場合一人称のゲームなので、“自分がゲーム内のキャラになったのと遜色ない感覚”をゴール地点と仮定する。
これは、より普遍的に考えると、”物事を長期記憶に保存し(いわゆる「体で覚える」)、他の事を考えながらでも無理なくこなせるようになった状態”である。
実は、この状態を的確に表した言葉が存在し、それを“手続き記憶”と言う。
手続き記憶は、自転車に乗れるようになるとか、うまく楽器の演奏ができるようになるというような記憶で、同じような経験の繰り返しにより獲得される。一旦形成されると、意識的な処理を伴わず自動的に機能し、長期間保存される。
(Wikipediaより抜粋)
比較的多くの人が共感できる事例として、キーボードのブラインドタッチを思い出してほしい。
今の時代、大学生以上の人はたいてい、画面を見ながら書くことを考えつつ、手を動かすこと自体には大して神経も使わずに文字を打つ、という事ができると思う。
しかし、もちろん初めからこうだったわけではない。ホームポジションの指の下のキーから順番に覚えていって、何度となくミスしながらもマスターしていったはずだ。人によっては、タイピング練習ソフトでスコアを上げるのに熱を上げたかもしれない。
完全な初心者から無意識で扱えるようになるには、半年くらい。ちょいちょい思い出しながら使えるようになるまでは1,2か月くらいだが、完全な自動化となるとそれぐらいはかかった。
つまり、けっこうな長期間、覚えて頭から引き出して、間違ったら修正して、を繰り返すのが自動化のプロセスだ。(情報量のケタが違うが、英語学習でも同じようなプロセスを辿る。)
翻って、FPSにおける設定も、ブラインドタッチと全く同じ構造である。
感度や画質などは明確な間違いがあるわけではなく、現実とイメージのズレを修正していくイメージだが、「何度もミスをして正しい認識に直す」という構図はそのままだ。
例えば、Apexにおける“キー設定”を考えると、分かりやすい。キー設定が、ボタンとゲーム内行動の対応関係であるのに対し、タイピングも、ボタンと打てる文字の対応関係なので、ほぼ同じだ。
なので、「キー設定を変える=タイピングで言う「A」の位置を押すと「U」が表示される」みたいな話になる。設定の変更が自動化にとってどれだけ大きな障害か、納得して頂けただろうか。
しかし当然、実際に操作を自動化し、キャラと一体化したような感覚を得るためには、キー設定のみを固定するのでは不十分だ。
ここからは「変えてはいけない」設定項目と、その理由を列挙していく。
変えてはいけない設定項目
感度
まず、感度。「マウスをこれだけ動かすとゲーム内で照準がこれだけ動きますよ」という値は、体に染みこませなければならない、超感覚的なものだ。コントローラーのスティック感度も同じ。
感度を変更したばかりの時は、無意識でそれまでの感覚への上書き修正を行うので、エイム時の脳への負担が増え、立ち回りは二の次になる。
感度設定の目安は、以前の記事で述べた。最適値の範疇にある人は、設定自体が原因の不具合は絶対にない。後は慣れるだけなので、自信を持って固定してほしい。
画質設定
そして、画質設定。画質とはそのままPCへの負担と同義なので、上げるほどフレームレートは下がる。フレームレートが変わると画面のヌルヌル度合いが変わるので、同じ感覚ではプレイできない。
オススメはビデオ設定の記事で述べた“フレームレート固定”。これも狭義の設定不変だ。定常的な設定だけでなく、放っておくとシーンによってブレてしまうフレームレートも固定しちゃおうぜという事。詳しくは記事内で説明した。
視野角
最も強調しておきたいのは、視野角。視野角を変えると、画面に対する敵の大きさとスピードの比率が変わってしまうので、感度と画質の両方を変えた以上のインパクトがある。文字通り世界の見え方それ自体が変わってしまうので、マジで一生固定することを推奨する。
(視野角は104がオススメだが110の人も多い。90は敵が速く見えるし視野が狭すぎて、個人的にはキツイ(Ras、ShivFPSは90)。あと、自キャラのスピードが遅すぎて楽しくない笑 100のがだいぶマシ。このあたりも今の数値に慣れれば慣れるほど、変えた時に「無理っ!!」となる。)
環境
本当の意味で一体化を目指すなら、フィジカルな方面=デバイス・周辺グッズも固定しよう。
マウスを変えるとホールドする指の位置が変わるし、重さが違うと必要な力も変わってくる。マウスパッドで滑りやすさは言わずもがな。
コントローラーを使うプレイヤーは、コントローラーの種類も固定しよう。各コントローラーの使用感・オススメはどれか等、この記事で述べたが、パッドも変えるたびに全然違う操作感で、慣れがものを言うデバイスだ。
キーボードも、変えると高さやキーを押す長さ、応答速度などが変わってしまい、慣れなおし(新語)が必要になってしまう。
音響も、設定により足音の聴こえ方が違うので、例えば「アストロを使うなら同じ設定で常に使う、使わないなら一切使わない」と徹底しよう。イヤホンorヘッドフォンも、もちろん固定。
(アストロはこの記事で紹介した。)
期間の目安
経験上、最低でも3,4か月、長くて半年くらい、同じ設定・環境でやっていると、本当に「もう設定を変えることはないな」と思えるようになってくる。
なぜなら、日に日に自分とキャラの一体化が進み、今の操作感・慣れをリセットしたくないという思いが強くなるからだ。上級者の感覚に近づける「設定の固定」、ぜひやってみてほしい。
プロが自身の設定を自信を持って公開できるのも、同じ理由で変えるインセンティブ(誘因)が全くないからだ。
(例外は、Rasと一緒にやり始めた後のSellyが感度を2.8→3.0にしたくらい。)
設定を変えて弱くなった事例
ここからは、設定変更の抑止力とするために、「数か月キープしてきた設定を変えるとどうなるの?」という事を書こう。まず結論から言うと、とにかく違和感がすごくて(立ち回りを)考えることに集中できない。そして弾が当たらない。
始めた当時は当然、最適解を探すため何度となく設定を変えていたが、それは誰でも通る道だ。問題は、かなり慣れた設定を変えてしまった時。直近の失敗例をいくつか紹介しよう。
例えば、僕はDPI=800でやっているが、やはり多くのプロが400でやっているのは知っているので、最近400に変え、振り向きをほぼ同じくらいの数字にして試してみた。
しかし、理論上同じような感度でも、実際はDPIが変わると完全に別物だ。振り向き・ADSともに微妙に違うのが気持ち悪くて、すぐに戻してしまった。
(同じ設定で長くやるほど、感覚がフィットしているので、少し違う時にすぐに分かる。また、感度の記事で書いているように、結局DPIは400か800ならどっちでも良い。)
また、キーバインドの記事はちょいちょい更新していて、今でも最適解を探している。が、やはりキーを変えると、すぐに思った動きができずに、「ああ、このキーに変えたな」と思い出す工程が必要で、非常にしんどい。
特に、近接戦闘中に格闘を「変える前のキーコンで出そうとした」時には、引退したくなった(笑)
五本指という条件と、キーボードという、元々ゲーム専用のデバイスではないコントローラー、という特性上、どうしてもキーコンフィグを工夫したくなるが、変えた時のインパクトも大きいので注意するべきだ。
そして、ビデオ設定の記事で書いている”モデルディテール高”に変えた時は、目に見えてエイムが悪くなった。画質の変更は、感度・キー設定等に比べれば影響は少ないだろうと予想していたが、上述したように見え方だけでなく、PCへの負担の違いによって、ゲームの重さも変わってしまい、操作感が変わる。
ここまで自分の経験ばかりで恐縮だ。設定の変更は、キャラと自分の一体化における、最大の敵でありつつも、特にキー設定なんかは、「もしかしたらまだ強くなれるかもしれない」という期待をはらんでいて、非常に悩ましい。
個人的には、「調子が良かった設定を安易に変えない」という方針を強くオススメする。(物事が良い時に”変えない”のは人生の鉄則!)
おわりに
今回は、“設定を変えない”ことを自分なりに論理的に説明してみた。
プロも有名ストリーマーも当たり前のようにやっている事でありながら、その利点が明確に説明されておらず、実力が低い人ほど、コメント等で設定関連の話をしやすい傾向にあるように思い、改めて考えようと思った次第だ。
実際、強い人ほど、「ある程度見えて撃てたら、なんでも良いっしょ」というスタンスで、立ち回り関連や環境のことしか話さない。そして、設定に興味がないから変えず、結果勝手に自動化しているのだと推測している。
僕自身は、2020年4月にApexを始めて、設定やデバイスについてもあらかた悩んできたので、今現在それらを変更することはめったにない。しかし、悩みが解決した際に毎度更新してきた記事たちには、一定の自信を持っている。
なので、このサイトのApex記事も参考に、自分の設定を組んだら、上述の通りある程度の期間、設定のことなど忘れたようにプレイしてもらいたい。
ホントに、ゲームに対する認識が変わる。ボイチャで立ち回りの話や戦闘状況の報告しか話さなくなって「そういや、エイムとか操作について何も考えなくなったなー」と思えれば、かなり良い兆候だ。
また、最近は“キャラコン”に注目している。
本記事の序論「中級者以下の場合」で書いたのは、操作面(エイム・キャラコン)を上級者並みに自動化するための前提として、設定の固定があるという事だ。
実際、設定を固定しプレイしたとして、エイムは試合中絶対に試みるので、だんだん上達していくだろう。少し変わった視点からエイム上達を試みる記事も書いた。しかし、キャラコンはそもそも知識がないとできないし、意識して使わないと一向に上手くならない。
正直な話、キャラコンに関してはまだ僕も、知識はあるが実戦で自由に使うレベルには達しておらず、これからのプレイやリサーチで、どのように克服していくかを学び、記事に出来たらと思っている。(こちらも手続き記憶がカギになるだろう。)
今後も、読書や日常での気づきを大切にしつつ、Apexもやっていきたいので、よろしく!