この記事では、FPSにおけるエイム上達法を、ゲーム内の設定やプレイングのコツなどではなく、プレイヤーの物理的側面、つまり体の使い方や周囲の環境に着目して、紹介していく。
これらの要素を変えることによって起こる変化の特徴として、合うものが見つかれば劇的に能力が向上する時がある反面、合わないものを導入すると、むしろ弱くなってしまうということだ。
つまりリスクの高いギャンブル、という側面もあるわけだが、賭博と違って、合わないものは捨て、合うもののみを残していくという作業を通し、確実に、自分に合ったスタイルを確立していくことができる。
これから、様々な項目を紹介していくわけだが、筆者自身がFPSを始めてから、長い時間をかけて思いついたものを少しずつ試していった結果、「有意な変化が表れる」と認めたものを集めている。
なので、これらを一気に導入すると、「何が良くて何が悪かったのか分からない」といった状況になる可能性が高い。
各々、用法容量を守って、少しずつ試していくことをオススメする。それでは始めよう。
レッシュ4スタンス理論で自分のタイプを知る
レッシュ4スタンス理論とは、スポーツ選手の体重の重心を前・後ろと内・外の2×2に分けることで、4パターンのタイプに分類する理論だ。
昔テレビでこの理論が紹介された時、イチローは前重心で松井は後ろ重心なので、自分の重心の位置を知らずにタイプの違う選手の真似をすると、全く成果が出ないと言われていた。
それをFPSで使うというのが、この章のアイデアだ。
まず、以下の記事を参照し、自分がA1・A2・B1・B2のどのタイプなのか、調べてみよう。
すると、自分の重心が、前なのか後ろなのか、そして、外なのか内なのかが分かる。
そして次に、使っているマウスの形を見て、自分のタイプに合っているものかどうか、確認しよう。
例えば、Aタイプは前重心なので、つまみ持ちにするとコントロールしやすいかもしれない。(TOR・Eurieceなど)
Bタイプは後ろ側でコントロールするので、手のひらがマウスの後ろにびたっとつくような、大き目のマウスが合っている。(CR・Kawaseなど)
そのニーズに最も適したマウスとして、BenQのZowie ZAシリーズがオススメだ。
さらに、1タイプは内側重心。なので、Sellyのように、マウスのボタンをより体の内側方向(つまり左側)で押す持ち方が適している可能性がある。
(毎回断言をしていないのは、理論的には正しいが、結局個人の好みだから。)
2タイプは外重心なので、薬指や小指をマウスの前の方まで伸ばす持ち方が合っているケースも多い。(FAV・Aimbotなど)
また、マウスの右側のスペースを確保するために、右側が膨らんでいるエルゴノミクスタイプのマウスが合っている可能性がある。
マウスだけでなく、キーボードの配置も、レッシュ4スタンス理論で説明できる。下記の記事を参照しよう。
三本指持ちを試す
この動画で紹介されている、三本指でマウスを持つ持ち方は意外と人気があり、Shomaru7だけでなく、CrylixやAlbralelieも使用しているようだ。
この持ち方がなぜ強いのかというと、マウスに対して完全に左右対称になるように手を置くことになるので、直感的に右や左・縦方向に動かした時の操作精度が、人体の構造上正しくなりやすいからだ。
(中指を中心に鏡のようになっている。)
また、キー設定の記事で説明したように、LCtrlでしゃがむのが苦手な人は、スペースをしゃがみにしてマウスホイールのみでジャンプする方法が有力である。
が、その場合普通持ちだと、飛ぶのと全く同じタイミングで発砲することができず(Rasがよくやるやつ)、厳密には少し不利になってしまう。
しかし、三本指持ちなら、それぞれのボタンに常に担当の指が待機していることになり、慣れればジャンプ撃ちもこなせるようになる点で、やはり強いと言える。
ピース持ちを試す
プロプレイヤーがよくやっているマウスの持ち方の中で、最も有名なのが、このピース持ちである。
僕はAterui Mizuno氏の動画で、Selly・Obly・ChensouOzisanの三名がこの持ち方であることを知り、考察するに至った。
色々な場所でこの持ち方の研究がされているが、僕の個人的な意見では、この持ち方の強みは「親指と薬指でマウス裏面のセンサーをつまむ」ように持てることだ。
こうすることで、マウスという、鉛筆のような細かいコントロールができない物体を動かす際も、限りなく点で操るに近い操作感を得ることができる。
ただ、この持ち方と必ずと言っていいほどよく併用される、「クリック位置を左にずらす」という手法は、やってみると分かるがかなり内側重心な使い方だ。
なので、本来はレッシュ4スタンス理論で言う、1タイプの方が合っている持ち方なのかもしれないが、「センサーをつまむ」意識はどの持ち方でも有効なので、やってみてほしい。
(ちなみに、三本指持ちも、親指と小指でセンサーをつまむ形になる。やはり最強に近い持ち方の一つ。マウスによっては合わないのがたまにキズか。)
肘置きを使う
北米強豪プロ・SentinelsのLouが使っている手法。
マウスパッドを置いている机と同じ高さの小机を用意し、肘をビタづけしてエイムする。
(典型的なものが、デスクの右側に透明デスクを置いているシーン。)
このやり方は、操作が安定しそうなイメージがあるが、やってみると、どちらかというと動きを制限されたという感覚が強かった。
というのも、至近距離や建物などの戦闘で、激しく振り向きを繰り返すような操作を行う時、置いた肘を浮かせないと可動域が足りなくなる。
その判断がなかなか難しく、かつ肘を置いているデスクが椅子の足にガタガタ当たったりして、意外とストレスも大きかった。
だが、他のゲームのプロで、机を斜めにして肘を置き、ものすごく強い選手もいるようなので、これも向き・不向きのあるアイデアとして、知っておいてほしい。
手首エイムに特化する
このサイトでは、感度設定は基本的に、400DPI・3.0から少し下げたくらいの低感度を推奨している。
しかし、トッププロはまだしも、ストリーマーのような、半分エンジョイ勢の人々の中には、高感度でめちゃくちゃ強い人も、チラホラいる。
たしかに、人体のことを考えれば、腕も使ってエイムするより、完全に手首のみで行った方が、正確性は増す。(手首の耐久性を度外視すれば。)
なので、一度ほぼ全ての操作を手首で行えるような感度で練習し、手首エイムの感覚を鍛えるというのも、一つの方法だ。
もしくは、そのスタイルがめちゃくちゃ合っているのであれば、TimmyやSPYGEAのような高感度勢としてやっていく道も、あるかもしれない。
なんにせよ、物は試しなので、一度やってみて損はない。
個人的には、このサイトで推奨しているような低感度のプレイヤー達も、エイム時には驚くほど手首をうまく使っていることに注目しており、それを意識してエイム練習ソフトをやるだけでも、エイムが変わってくるので、そちらもやってみてほしい。
ADSを「切り替え」にする
この記事の改訂前もオススメしていた方法だが、切り替えからホールドに戻す選手が増え、今使っているのはZederとAimbotくらいだと思う。
論理的には、ADS時も振り向きもマウスにかかる指の圧力が同じになるので、垂直抗力で計算される摩擦も同じになり、エイムの経験値が貯まりやすいと書いた。
しかし、エイム練習ソフトをADS感度で設定し、トラッキング等の練習時から、右クリックを押しっぱなしにする手法が普及したことで、あまりメリットが感じられなくなってしまった。
むしろ、とっさの時にクリックしなければいけない回数が増えてしまうので、インファイトの多いプレイヤーは注意が必要だ。
モニターの距離・角度を変える
プロチーム・456のnaohiro21は、モニターをめちゃくちゃ近づけることにより、視野角110でも高い視認性でプレイすることに成功している。
しかし、FPSのプレイ時には、下記記事のような設定を使い、色味をくっきりさせている人も多いはずなので、眼精疲労には重々注意しよう。
また、日常生活でよく目を動かすと言えば、本やスマホの画面で文字を読む時だと思うが、みんなその時、けっこう対象を下に向けて読んでいるのではないか。
モニターの場合、あまり下に傾けると、猫背になって首に負担がかかってしまうが、そのように、自然に目を動かすシーンを思い出して、改めてモニターの位置を調整してみると、敵の動きを追いやすくなるかもしれない。
実際、筆者はモニターの位置を下げ、少し上から見下ろせるような角度をつけて、プレイしている。
マウスを替える
マウスは、レッシュ4スタンス理論で学んだ、自分に合っていそうなマウスを軸に色々調べてみる他、今のマウスに欲しい変化(この位置にボリュームがほしい、もっと小さいの、重すぎる軽すぎるなど)を軸に選ぶ方法もある。
例えば、以前僕は、つまみ持ちを試すのに、「Logicool GPRO 有線」を買ったが、小さめのサイズに満足したものの、高さが足りないと思った。そこで、ネットで綿密に調べてみたところ、欲しいサイズ感のマウスは「Zowie ZA-13」である事が判明し、買ってみたが、かなり上手くいった。
そして、やはり店頭で実際に持ってみるのが、一番失敗が少ない。が、だいたい量販店に売っているのはLogicoolやRazerのマウスばかりで、BenQ ZowieやFinalmouse、XtrfyにVAXEE・Gloriousなど、買うまでに実際に触れない機種もたくさんある。
そういうものを検討している時は、YouTubeで検索し、動画で他のマウスとの比較を確認し、慎重に選んだ方が良い。
とは言っても、今の時代、合わなかったデバイスは「新品に近い」としてメルカリに売れるので、フットワークを軽くするのも成功の秘訣かもしれない。
キーボードをテンキーレスや60%に替える
キーボードは、少なくともフルサイズのものを使うのはオススメできない。
有名プレイヤーでフルサイズを使っている人は皆無で、実際、マウスの可動範囲が狭すぎて、正直問題外だ。
ただ、ダッキーのような60%タイプに替えると皆有利になるのかというと、そうでもない。
レッシュ4スタンス理論の章でも記事を引用したが、外重心の人は脇を広めに開いて大きく構える方が安定するので、そこまでシビアにスペースを考えなくても良いからだ。
むしろ、キーボードによって微妙にキーの配置や間隔が違うので、そちらも重視した方が良い。
総合的に考えると、LogicoolのTKL(テンキーレス)キーボードか、ダッキーの60%、もしくはRazer製のキーボードがオススメだ。
ダッキーは既にレビュー記事を書いたが、最近キーボードのGPRO Xも買ったので、またレビューを書きたい。
昇降デスクとモニターアームを買う
キーマウの操作において、マウスパッドの高さが適切かどうかは、実はめちゃくちゃ重要だ。
なぜなら、高すぎると強制的に脇が開かされ、低すぎると逆に脇が締まる形になるので、これまで重視してきた、「自分に合ったフォーム」を固めるのが、事実上不可能になる。
プロやストリーマーに多いのは、昇降式デスクと机一杯に使える特大マウスパッドの組み合わせ。これらにより、高さが自在の机でそのままマウスを滑らせる感覚が手に入る。
また、モニターアームがないと、机の高さとは別にモニターの位置や角度を変えることが困難なので、これまた自分に最適な配置を見つけることができない。
そもそも、モニターの下に足が生えている形は、キーマウの操作にとって、非常に邪魔だ。
今、付属のスタンドを使っている人は、それが当たり前で何も感じないかもしれないが、モニターアームを導入してからは、素直にそう思う。
いずれ改訂予定だが、昇降デスクとモニターアームをレビューした記事を載せておこう。
おまけ・Sellyの超絶エイム動画